緩めておきたい斜角筋
今日は、緩めておきたい筋肉シリーズです。歌うための筋肉というと、「使い方」や「鍛え方」をイメージするかもしれませんが、歌うための筋肉の中には、使うわけではなく、単に緩めておきたい筋肉というのがたくさんあります。使うわけではないけど、硬くなっていると困るので緩めておきたい筋肉です。今日お話したいのは、そのうちの一つ「斜角筋」です。
斜角筋は、首こりの原因になる筋肉と言われています。思い返せば、私は、中学の頃から肩こり・首こりがひどい子供でした。慢性的なこりだったため、多少の張りや痛みは慣れっこになってしまい、積極的に治そうとは考えていませんでした。もちろん、斜角筋という名前も聞いたこともありませんでした。
ある時、「斜角筋」という筋肉が、首こりに関係していると知り、その時、紹介していたストレッチをやってみたところ、肩や腕が温かくなって一気に体が楽になったんです。その直後に歌ってみると、とても声が出しやすい感覚がありました。
その出来事をきっかけに、これまで、力んでしまったり、どうしても脱力できなかったのは、首や肩の筋肉が凝り固まっていることが原因の一つなのではないかと思うようになりました。
いつも力んでしまう人や、脱力が苦手な人は、首や肩の筋肉が凝り固まっているかもしれません。まずは、斜角筋のことを知ることから始めましょう。次の章で、斜角筋がどんな筋肉なのか見ていきますよ。
斜角筋とは
斜角筋は、首を横に曲げたり、前に曲げる働きがありますが、それ以上に、首を支えるという役目を果たしています。首は重い頭を支えているので、常に緊張しっぱなしです。そのため、首こりの原因となる筋肉と言われているのですね。
斜角筋は、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の3つからなっています。それぞれ頸椎から始まり、前斜角筋と中斜角筋は第1肋骨に、後斜角筋は第2肋骨に停止しています。肋骨にくっついていることから想像できると思いますが、呼吸困難のときに、肋骨を引き上げ吸気を助ける働きもあります。
また、前斜角筋と中斜角筋の隙間から、腕に伝わる血管と神経が出ているため、斜角筋が緊張すると腕や指がしびれることがあります。 斜角筋は首の比較的深い場所にあり触りにくい筋肉なのですが、私は、以前、無理に触ろうとして神経に触れ、腕から指先までビリビリと感じたことがあります。皆さんはどうぞお気を付けください。
歌とは関係ある?
斜角筋について場所や機能はイメージできたと思います。では、歌との関係はどうなのでしょう。歌う時にどんな影響を及ぼすか、一緒に考えていきましょう。
バーバラ・コナブル氏は、著書「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」の中で、次のように言っています。
音楽家ならだれでも知っておいてほしいことは、演奏中に首の筋肉はとても自由でなくてはならないことです。というのは首の筋肉が硬いと、からだ全体が硬くなります。それはとても悪いことです。自由なのが良いのです。
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斜角筋という言葉こそ出ていませんが、斜角筋はまさに首の筋肉なので、硬いのは「とても悪いこと」ということになりそうですね。前章で斜角筋の隙間から腕に伝わる神経が出ていると書きましたが、これはまさに、首の硬さが腕に伝わるということですね。
もう少し具体的に、歌う時の斜角筋について、川井弘子氏が著書「うまく歌える「からだ」のつかいかた」の中で、次のように書いています。
首にある3つの斜角筋と上後鋸筋が収縮すると、歌う呼吸の妨げになります。~中略~ 私たちが呼吸困難に陥った時、これらの筋肉は頸椎といっしょに肋骨を引き上げて吸気を助けますが、歌うときの呼吸につかわれることには適していません。なぜなら、これらは歌う楽器である喉頭に近いところにあるために、これらの筋肉がたくさんつかわれると、吸気時に雑音が入り、声は喘ぎ声のようになってしまうからです。歌う時にこれらの筋肉が働いて呼吸を助けるのはよくないことを知っておきましょう。
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声楽を始めたばかりの人の中には、息を吸う時に、肩や肋骨が上がってしまう人がたくさんいます。もしかしたら、斜角筋を使ってしまっているのかもしれませんね。でも、これは、練習することで、比較的早く直すことができます。まずは、鏡を見て、肩や肋骨が上がっていないか自分でチェックしてみてください。肩や肋骨が上がっていることに気づいたら、いったん全身の力を抜いてあげましょう。腕をゆらしたり、膝を曲げるのも脱力に役立ちます。息を吸うのに力は必要ありません。身体の力を抜けば、息は勝手に戻ってきますよ。
さて、斜角筋は歌う時には使ってはいけないということがわかりました。
では、斜角筋が凝り固まっている場合はどうでしょう?そもそも斜角筋が凝り固まっていることに気づいていない人も多いかもしれません。
先にコナブル氏の言葉を引用した通り、首の筋肉が硬いのは「とても悪いこと」です。でも、首の筋肉が硬くなっていることに気づいていなければ、それを柔らかくしようとも思わないし、歌への影響にも気づけませんよね。
まさに私がそうでした。斜角筋という筋肉も知らなかったですし、それが硬くなっていることが歌うことに影響を及ぼすなんて、考えもしませんでした。
自分が気づいていないことを直すのは至難の業です。まずは、気づくことから始めましょう。次の章で、斜角筋のストレッチ方法をご紹介します。ぜひ実践して、首周りが柔らかくなる感覚を味わってみてください。そのあとに歌ってみて、もし声が出しやすくなったと感じたら、筋肉を緩めることの重要性を実感できるはずです!
ストレッチ方法
今回は、大分県で整体院をやっていらっしゃるGENRYUさんのYouTube動画を紹介したいと思います。斜角筋に関する記事や動画をいろいろ試してみましたが、一番効果を感じました。ぜひ実践してみてください!
今日は、緩めておきたい筋肉シリーズとして「斜角筋」について見てきました。斜角筋は使う機会が少ないため、凝り固まっている人が多い筋肉だそうです。日々のストレッチで斜角筋を緩め、いいパフォーマンスにつなげて行きましょう!
<参考文献>
- 「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」(バーバラ・コナブル著)
- 「うまく歌える「からだ」のつかいかた」(川井弘子著)
「学び始めに最適!!筋肉のしくみ・はたらきゆるっと事典」(坂井建雄監修)