「おもしろいでしょう?」の感覚
こんにちは、La Coppia Musica(ラ・コッピア・ムジカ)の岸田です。私は絵画を鑑賞するのが好きです。いろんな時代のいろんな画家の絵を見ますが、日本の画家では、堀文子さんという画家が好きです。
堀文子さんの存在を知ったのは、20年以上前です。テレビでドキュメンタリー番組を見たことがきっかけでした。その番組の中で、堀さんは、すでに90歳近かったと思いますが、庭に出ていくと、蜘蛛の巣に霧吹きで水をかけ、番組スタッフに「おもしろいでしょう?なんてきれいなんでしょう。」と言いながらスケッチを始めたんです。私には、堀さんがまるで少女のようにキラキラ輝いているように見えました。
私は、昆虫はあまり好きではないので、蜘蛛の巣に水をかけようなんて思いつきもしませんが、堀文子さんがわくわくしながらその絵を描いている様子を見て、その絵を見てみたい、と思い、その時から、堀文子さんの個展に足を運ぶようになりました。
堀文子さんからは、いろいろな意味で衝撃を受けました。
蜘蛛の巣に霧吹きで水をかけたことも、
90歳の女性が少女のように見えたこととも、
それを「おもしろいでしょう?」と表現したことも・・・。
堀文子さんの絵というよりは、生き様そのものに興味を持ちました。
それから20年くらい経って、コロナ禍の影響もあり、絵を見に行く機会は少なくなりました。
私は声楽を教えるようになり、ある日、生徒さんに向かって「おもしろいでしょう?」と言っている自分に気づき、久しぶりに堀文子さんのことを思い出しました。
あ、堀さんと同じこと言ってる?
私は、歌う時の身体の動きやそれによって声が変わってくることが、とてもおもしろくて、生徒さんがそれを体感できたとき、すごく嬉しい気持ちになります。それでつい、「ねー、おもしろいでしょう」と口から出てしまうのです。
少し身体の使い方を変えるだけで声が出しやすくなったり、イメージを変えるだけで歌が見違えるように音楽的になったり、人間にはコントロールしきれない部分がたくさんある中でうまくできるようになるって、とても神秘的ですごいことだなぁ、といつも感動してしまうのです。
もしかしたら、堀文子さんもそんな感覚だったのかな?
堀さんも、きっと水滴がついた蜘蛛の巣に神秘的なものを感じていたんだと思うのです。それを表現する言葉が、「おもしろいでしょう?」だったのではないか、と。
あの時の番組のその言葉を覚えている人がどれくらいいるでしょう?
あのときの堀文子さんのように「おもしろいでしょう?」と言われたら、そう思っていなかったとしても、おもしろいかも、と思えてきます。そのエネルギーが強すぎず、押しつけがましくなく、とても心地よいエネルギーに、私には感じられました。
そんなふうに、日常の些細なことでも「おもしろい」と感じられる自分でありたいと思いました。そして、「おもしろいでしょう?」というエネルギーを人に伝えられる人になりたいな、とひそかに思ったのでした。
今、レッスンの度に「ね、おもしろいでしょう?」と言っている自分。生徒さんにはどのように伝わっているのでしょう?歌うことや人間の身体は神秘的でおもしろい、そのエネルギーが少しでも伝わっているといいなぁと思うのでした。
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