緩めておこう胸の筋肉
胸の筋肉、と聞いてどんなイメージがあるでしょうか?
なんか呼吸に関係ありそう、と思う人もいれば、鍛えた方がいいのかな、と思う人もいるかもしれません。 今日は、胸にある筋肉、大胸筋と小胸筋についてお話します。結論から言うと、歌うために大胸筋や小胸筋を意識的に使う、ということではありません。むしろ、使いたくないので、もし凝り固まっているなら、緩めておきましょう、という話になります。
では、さっそく大胸筋と小胸筋がどのように働くのか見ていきましょう。
大胸筋ってどんな筋肉?
大胸筋は、よく耳にすると思いますが、胸部の表層にある強力な筋肉です。女性はバストアップ、男性は分厚い胸板を作りたいとき、まっさきに鍛えましょうと言われる筋肉ですね。
鎖骨、胸骨や腹部から始まって、上腕骨に停止する大きな筋肉です。
左右の胸の前面を覆う幅広い大きな筋。鎖骨、胸骨、肋軟骨、腹直筋鞘から起こり、上腕骨に停止する。
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上腕骨に付着していることから想像できるかもしれませんが、大胸筋の主な役割は、肩を内側に回すことです。胸の筋肉と書くのになんだか不思議ですよね。呼吸に関係する部分でいうと、強制的に息を吐くときに肋骨を挙上させ胸郭を広げる働きがあります。
小胸筋ってどんな筋肉?
小胸筋は、大胸筋の内側にある小さな三角形の筋肉です。第3~第5肋骨から始まって、肩甲骨の烏口突起につながっています。
肋骨と肩甲骨の烏口突起を結ぶ三角形の筋で、大胸筋に覆われている。
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肩甲骨につながっていることから想像できるように、肩甲骨を引き下げる作用があります。呼吸に関する部分では、大胸筋と同じく、強制的に息を吐くときに肋骨を挙上させ胸郭を広げる働きがあります。
歌との関係は?
大胸筋、小胸筋の機能を見て、まず、気になるのが、呼吸に関する部分。両方とも、強制的に息を吐くときに肋骨を挙上させて胸郭を広げる働きがありましたね。
息を吐くときに胸が上がってしまう人は、大胸筋や小胸筋を使って肋骨を引き上げてしまっているのかもしれません。それぞれの胸筋を触って、硬くなっていないか、筋肉の変化を感じてみましょう。
呼吸をする際、自然に肋骨が動きます。胸が硬いとその自然な動きの妨げになるかもしれません。
また、胸が硬いと、使いたい腹筋を使うことが難しくなります。実際に、胸に力を入れてみると、重心が上がってしまい、お腹の下の方に力を入れにくいと感じるのではないでしょうか。
腹式呼吸が大切だとお腹のことを考えるときに、大胸筋pectoralis majorと小胸筋pectoralis minorの状態も確認しておきましょう。ここに感覚がなく固まっていると、歌うときにお腹の使い方がよくわからないでしょう。
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さらに、注目したいのは、小胸筋が肩甲骨の烏口突起に付着していることです。肩甲骨にはたくさんの筋肉が付着しており、それらは、姿勢や肩こり、そして呼吸に影響を及ぼします。肩甲骨が正しい位置にあって、柔軟に動くことが健康のためにも、歌うためにも重要です。
小胸筋の凝りは、肩こりや猫背につながりますので、普段から緩めておきたいですね。
大胸筋・小胸筋を緩める方法
大胸筋のストレッチ
- 壁に対して横向きに立ち、壁側の足を少し前に出します。
- 肘を伸ばした状態で壁に手をつきます。
- 体を壁と反対側に回旋させます。心地よい伸びを感じる場所で20秒くらいストレッチします。
- 反対側も同じように行います。
※手をつく位置を、肩とより高い位置、肩と同じ高さ、肩より低い位置、に変えるとこで、大胸筋の伸びる位置が変化します。
小胸筋のマッサージ
- 烏口突起を探す。烏口突起は、肩甲骨の一部で体の前面から触ることができます。鎖骨の下側を肩の方になぞっていき、肩関節の少し手前にある、丸っこい骨です。触ると痛いと感じる人もいるかもしれません。
- 烏口突起を押さえたまま、腕を前後に揺らす。
- 反対の腕も行います。
今日は、大胸筋と小胸筋について見てきました。 歌の呼吸に直接関係があるわけではありませんが、これらの筋肉が固まっていると、他の必要な筋肉に影響が出てしまう可能性があります。表層にあり、ストレッチやマッサージがしやすい筋肉でもあるので、日常的に緩めておきましょう。筋肉を緩めることは、いい声を出すための第一歩です!
<参考文献>
- 「ぜんぶわかる人体解剖図」(坂井建雄著)
- 「ぜんぶわかる人体解剖図」(坂井建雄著)
- 「歌う人のためのはじめての解剖学~しなやかな発声のために」(川井弘子著)