LaCoppiaMusica ラ・コッピア・ムジカ
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体の中の空洞!共鳴の話

今日は、「共鳴」について書きたいと思います。「共鳴」という言葉は聞いたことはあるものの、なんとなくわかるようなわからないような感じのするものかもしれません。まずは、共鳴とは何かを知るところから始めましょう。

共鳴とは

ウィキペディアによると、

振動帯が、その固有振動数に等しい外部振動の刺激を受けると、振幅が増大する現象

と、なにやら難しいことが書いてありますが、押さえておきたいことは、振幅が増大する、つまり、音の響きが豊かになるということです。


歌を歌うとき、大きな声を出すというと、首や肩に力を込めて声を振り絞るイメージがあるかもしれませんが、大きい声を出すために必要なのは、力ではなく、十分な共鳴なのです。


私たちは声を出すときに、声帯を振動させて声を発します。そもそも声帯の役割は、音を発することです。声を大きくしたり、音程を変えたり、音色を変えたりすることにも、結果として影響はしますが、声帯の主な役割は、音を発すること、つまり、音源なのです。


そこに誤解があると、声帯をコントロールしようとして、首に力が入ったり、声帯に意識を集中させがちです。


声を大きくするのは、声帯ではなく「共鳴」の役割になります。では、どうやって共鳴させればいいのでしょう?


輪ゴムと紙コップを使った簡単な実験をしてみましょう。輪ゴムをパチンとはじくと「びよん」と音がなりますよね。輪ゴムだけだと小さな音ですが、そこに紙コップで空洞を作り、共鳴を起こすと、先ほどと比べて音が大きくなります。

そうです。共鳴を起こすには「空洞」が必要なのです。

歌うときに意識したい空洞とは

では、声を出すときは、どこに共鳴させればいいのでしょうか?


実は、私たちの体は、意外と空洞だらけなんです。私たちの頭蓋骨には、副鼻腔という空洞があります。鼻腔の周りの骨の内部にある空洞で、鼻腔とつながっているので、副鼻腔と呼ばれています。副鼻腔には、前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞という4種類があります。

小鼻の横の頬骨を指で軽く押すと、鼻が通ったような感じがする場所がありますが、そのあたりが上顎洞ですね。他には、花の匂いをかぐようにして息を吸うとき、篩骨洞を感じられたり、耳を引っ張った状態で息を吸ったりすると、蝶形骨洞を感じられます。


最初は、副鼻腔に声を響かせるイメージがわかないかもしれません。まずは、空洞があることに気づきましょう。息の流れや声の通り道を意識することで、だんだんその感覚がつかめてきます。どうしても感覚をつかめない人は、わざと鼻声で歌ってみるといいかもしれません。風邪を引いて鼻が詰まったとき、いつもと違う場所が共鳴するのを感じ、やっと感覚をつかめた、という人は実はとても多いんです。響かせるのではなく、まったく響かない状況を作ってみるのも、一つのアプローチ方法かもしれません。


副鼻腔は、骨にある空洞なので、その大きさや形は後から変えることはできません。しかし、人の体には大きさを変えられる空洞がありますよね。それが、口や喉(気管)です。

「口を大きく開けて」とか「喉を開いて」と指導される方もいると思いますが、これは声を大きくするための共鳴を作るためなのですね。


先ほどの副鼻腔は骨にある空洞なので、それ以上大きくすることはできませんが、口の中、例えば、軟口蓋は筋肉でできているので、ある程度コントロールすることが可能です。また、舌も筋肉でできていますよね。舌の位置によって、喉の奥の空間が変わってきます。舌の位置をいろいろと変えて発声してみるとその違いが判ると思います。また、声帯が収まっている喉頭の位置は低い位置にある方がいいとされるのも、少しでも気管に空間を作るためなのです。


ここまで、共鳴について、最大限活用したい、としてきましたが、最大限に活用したいのは、実は、クラシックの場合だけです。オペラでは、マイクを使わずホール中に声を届けたいので、できるだけ声を大きく響かせる技術が必要になります。オペラ歌手とジャズシンガーの発声をイメージすると共鳴の違いがわかりやすいのではないでしょうか?

ここで、共鳴のもう一つ役割について書きたいと思います。それは、共鳴によって声の個性が変わる、ということです。例えば、副鼻腔の共鳴が少ないと鼻声に聴こえたり、口の中の空洞がひらぺったいと幼い声に聴こえたりしますよね。オペラ歌手とジャズシンガーの音色の違いも共鳴の違いが大きく関係していると言えます。声帯で発せられる音は、ある程度、音色が決まっていますが、共鳴を変えることによっていろいろな音色を出すことが可能になります。このことを知っていると、音色の選択肢が増え、表現の幅が広がると思いませんか?

空洞は体全体に存在します

さて、ここまでで、首から上の共鳴について書いてきました。声の共鳴なので空気が通るところが主な共鳴場所になりますが、身体には他にもたくさんの空洞があります。胸郭は中に心臓や肺が収まっていますが、空間を作っていますし、骨盤も同じですよね。また、背骨がしなやかに動くのは、椎骨と椎骨の間に空間があるからです。他の関節もそうですよね。声は、骨や皮膚をつたって全身に響きます。自分の体全部が共鳴体といっても過言ではありません。

歌う際、筋肉をいかに使うか、あるいは、使わないか、に目を向けることが多いと思うのです。でも、少し視点を変えて、全身にある空間を意識してみるとどうでしょう。胸郭や骨盤の空間、骨と骨との間の空間、もちろん、頭蓋骨にある空間を意識すると、ふっと力が抜ける感じがしませんか?私たちは空間を作り出している筋肉を使うことばかり考えて、せっかくの空間をつぶしてしまっていたのかもしれません。


マイムアーティストJIDAIさんの著書『「動き」の天才になる!筋トレ・ストレッチ以前の運動センスを高める方法』の中で、「エネルギーの通り道を整えるために「体にすきまを作る」」という節があります。その中に次のような記述があります。


骨が筋肉に邪魔されずに動けるようになると、自然と、エネルギーの通り道である川が途中で途切れたり、余計なところに流れることなくスムーズに目的地までたどり着くようになります。また、流せる水の量も増やせるようになります。要するに、力まなくなる、発揮できる力が強くなる。ということですね。では、骨が筋肉に邪魔されずに動けるようにするにはどうしたら良いのか?それは、体の中の「すきま」を潰さないようにするのです。

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この本は、スポーツやダンスなど、体の動きについて書かれている本ですが、エネルギーの通り道、という考え方は、歌にも共通していると思い、とても共感しました。歌はエネルギーです。そのエネルギーを共鳴させ増幅させ体の外に表現するわけですよね。息の流れを川の流れに例えて説明することがありますが、川の流れが途切れるということは、息が途切れるということ。息が途切れるということは、歌の場合は、声が途切れるということに他なりません。


また、筋肉に邪魔されずに動けるようにする、という考え方にも、とても共感しました。声楽では、緩めて放っておいた方がいい筋肉がたくさんありますが、思うように緩められず、歯がゆさを感じることが何度もありました。まさに筋肉に邪魔される感じです。筋肉を緩めようと筋肉の方ばかりに意識を向けていましたが、大事にしたいのは、筋肉を緩めることで生まれる空間の方だったのですね。


今日は、共鳴について書いてみました。声の大きさの話から、エネルギーの通り道の話まで広がっていきました。視点を変えることで、体の感覚が変わった、という方、いらっしゃるのではないでしょうか?共鳴させるためには、空洞が必要で、その空洞は声を大きくするとともに、エネルギーの通り道になる。なかなか奥深く、私には神秘的にすら感じられるのです。

<参考文献>

  1. 「「動き」の天才になる!筋トレ・ストレッチ以前の運動センスを高める方法」(マイムアーティストJIDAI著)