LaCoppiaMusica ラ・コッピア・ムジカ
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軟口蓋の動きに注目!

歌うときに、「もっと大きく口をあけて」と言われたことはありませんか?私もそのような指導を受けたことがありますが、どうしても顎に力が入ってしまい、どうすればいいのかわからなくなってしまったことがありました。そこで今日は口の開け方に関係する「軟口蓋」について書いて行きたいと思います。

軟口蓋とは

口の天井部分、なんてあまり考えたことないと思いますが、軟口蓋は、口の天井部分にあります。いわゆる上顎のことです。上顎の歯に近い部分は硬いので硬口蓋、奥の方は筋肉で柔らかいので軟口蓋と呼ばれます。軟口蓋の先には口蓋垂(のどちんこ)があります。上顎を舌でなぞってみると、硬口蓋は骨があるので硬く、軟口蓋は筋肉なので柔らかいことがわかります。

軟口蓋の一番大事な役割は、食べ物を飲み込む「嚥下」に関係しています。嚥下の際、軟口蓋が上がって鼻腔を閉じます。これにより、食べ物が鼻ではなく食道の方に流れていくようになっています。食事の時、私たちが意識しなくても軟口蓋は勝手に上がって鼻腔を閉鎖しているわけです。

咽頭腔に食物が入ると軟口蓋が上がって鼻腔との連絡を閉じる

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歌うときはどうなっているといい?

食べ物を食べる際、軟口蓋は勝手に上がるということはわかりましたが、歌うときはどうなっているのでしょうか?


実際に見て確認してみましょう。鏡の前に立ち、いつもより少し大きめの口を開けて、口蓋垂(のどちんこ)が見えるようにします。その状態で発声してみてください。喉や口の中に無駄な力が入っていなければ、口蓋垂が上がるのがわかるはずです。


次に、声を出さないで口蓋垂を上げようとしてみてください。発声したときのようには上がらないことがわかるでしょう。発声するときは自然に軟口蓋が上がります。これを声を出さずに力で上げようとすることはできません。できたとしても顎や舌などにかなりの力を入れることになり、これは歌うために邪魔な力です。

軟口蓋を上げることができるのは力ではなく、正しい発声だけなのです。

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軟口蓋は、余計な力が入っていなければ歌うときに自然に上がります。上げようとする必要はありません。むしろ、軟口蓋の自然な動きを邪魔しないために力を緩めておくことが大切です。

もし軟口蓋の動きがいちいちわかるのなら、美味しく食べられないでしょう。歌うのも同じです。軟口蓋は、歌うときにはだいたいあがっていますが、音程によってそのあがり具合が変化し、たとえば子音のnやmでは、一瞬さがります。つまり、必要なことを自主的にうまくやってくれているので、信頼して放っておいたらよいのです。

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口の空間を広くするヒント

クラシックの場合、口の中の共鳴部を広くするために「口を大きく開ける」とか「喉の奥を開けて」といった表現をしがちですが、前章でわかったように、軟口蓋は意識的に上げるものではなく、勝手に上がってくれるものです。


とはいえ、どうしても顎や口に余分な力が入ってしまって、軟口蓋が自然に上がる感じがつかめない人もいるでしょう。そんな人は、炊き立ての熱々の御飯を口に頬張ったときのことをイメージしてみてください。特に力を入れることなく自然に軟口蓋が上がったはずです。


軟口蓋は、食べ物を食べるときに上がって鼻腔を閉じる役割がありましたね。飲み込むときには鼻腔を完全に閉じてしまうので、飲み込む前の、ご飯を頬張った状態をイメージすると、適度に軟口蓋が上がり、歌うときの軟口蓋の位置と近い状態になります。


熱々の御飯を口に頬張ったイメージのまま声を出してみましょう。もし歌いにくいと感じたら、普段、歌うときに口の中のどこかに力を入れて発声しているかもしれません。歌うとき、口の中に力を入れることはありません。その力を使わずに歌う方法を探していきましょう。


今日は軟口蓋について見てきました。「口を大きく開けて」や「喉の奥を開けて」と指導される人は、単に軟口蓋が上がっていないのではなく、顎や口に余計な力が入っているのかもしれません。余計な力が抜ければ自然と軟口蓋も上がり、口の中に必要な空間が生まれます。まずは、顎や口の余分な力を抜く方法を模索しましょう。そして、その力を抜いた状態で発声する方法を焦らず、ゆっくり見つけていきましょう。

<参考文献>

  1. 「ぜんぶわかる人体解剖図』」(坂井建雄著)
  2. 「ヴォイステクニックの真実」(加瀬玲子著)
  3. 「歌う人のためのはじめての解剖学~しなやかな発声のために」(川井弘子著)