魂の叫び

歌と健康

こんにちは、yukiです。

先日、85歳の男性が体験レッスンにいらっしゃいました。お耳が遠いようで、電話口では何度も聞き返すし、会話がかみ合わないことも数回あって、正直、心配になりました。

本当に声楽に興味があるのかしら?

そんな不安を抱えながらも、お電話をいただいたその日(というよりは、電話のあとすぐ)に、お会いすることになり、いろいろお話を聞かせていただきました。

特に音楽経験があるわけではないそうですが、子供の頃から、とにかく歌いたくて、歌いたくて、でも社会人になると忙しくて歌えなくて、やっと落ち着いて歌えるようになったのが、定年後。60歳から十数年間、第九の合唱に毎年参加されたそうです。70歳を超えて第九への参加をやめた後は、カラオケで歌ってみたり、童謡唱歌を歌う会に参加してみたり、ウクレレを習ってみたりしたけど、何か違う、と感じていたようです。

歌いたいけど、カラオケは何か違う

結局、歌いたい歌を歌えず、日々暮らしていた中、私のチラシがポストに入ってきて、びっくりして、でも不安で、半分はひやかしのつもりで電話をかけてくださったそうなんです。

年齢はともかく、足を痛めていらっしゃるのと(足の踏ん張りがきかないと支えがうまくできません)、耳が少し遠いかな、という不安があったのですが、とりあえずは、腹式呼吸をして発声練習をして、コンコーネを歌ってもらいました。すると、

今までしゃべっていた声とは全然違う、若々しく艶やかな声!

びっくりしました。歌いたくて歌いたくて仕方なかった思いが、ストレートに伝わってきました。決して大きい声ではないし、初めて歌うメロディなので音程もいいわけではない、けれど、そこには、大きい声を出してやろうとか、うまく歌ってやろうなんていう欲は一切なく、ただただ歌いたい、という「魂の叫び」のようなものが感じられました。

思わず、私が「あぁ、歌いたかったんですね」というと、

「うん、歌いたかった、歌いたかった」と何度もうなずくのです。

だったら、歌いましょう。もう我慢することもないし、自分の気持ちに嘘をつく必要もないのですから。

たまたまご縁があって、近くで声楽教室を開くことになって、こんな出会いがあるなんて、本当にうれしいです。日々のレッスンで、やれ腹式呼吸だの、発声だの、支えだの、言っている私ですが、私の一番の仕事は、歌いたい人が歌える環境を整えること、だと切に思った出会いでした。

音楽は、後回しにされがちです。音楽がなくても生きていける、そう思われているかもしれません。でも、「生きる」と「命がある」ことは、別のことです。自分をちゃんと「生きる」ために、歌が必要な人もいます。その人がちゃんと自分の人生を「生きる」ためのお手伝いなら、私は惜しみなくさせていただきます。

魂の叫びは、決して大きいものではありません。灯のように、小さくても決して消えることのない、自分の人生の道しるべです。その魂の叫びに、皆さんはちゃんと向き合っていますか?