背骨と呼吸の関係
今日のテーマは背骨。 背骨は解剖学的には脊柱と呼ばれます。脊柱の機能は「呼吸」にとっても重要で、そのため歌とも大きく関係するパーツになります。正しく理解し、柔軟に使えるように整えていきましょう。
脊柱の構造
まずは脊柱の構造について知っておきましょう。脊柱は26個の椎骨がつながってできたもので、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾椎(尾骨)に分けられます。
脊柱は体幹の軸となっていますが、まっすぐではなく、頸部で前に、胸部で後ろに、腰部でまた前に、仙骨部で後ろにカーブしています。このカーブにより、重力や運動で生じる衝撃を吸収できるわけですね。
また、椎骨には椎体と椎弓に囲まれた椎孔があり、椎骨が重なることで全体として脊柱管を作っています。脊柱管内には脊髄が収まっており、そこを出入りする抹消神経や脊髄神経を守っています。
脊柱の役割
脊柱の構造が分かったところで、脊柱がどんな働きをしているか見ていきましょう。
- 体幹の軸となり体幹を支える。
脊柱は体の軸となりますが、中心より背中側に位置しています。まっすぐではなくカーブしていることで、頭や体の重さ、運動による衝撃を吸収し体幹を支えています。高い場所から飛び降りた時、脊柱に衝撃を感じたことはありませんか?もし脊柱がカーブしていなければ、その衝撃を吸収しきれなかったかもしれません。
- 体幹に動きを与える。
脊柱は複数の椎骨が連結されているため、多くの関節があり、様々な方向に動かすことができます。前後左右、回旋、ねじりなどが可能です。改めて脊柱の動きを観察してみると、すごいと思いませんか。
- 脊柱管内の脊髄や脊髄神経を保護する。
脊髄神経は椎骨と椎骨の間の椎間孔から出てきます。全身に張り巡らされている神経を、脊柱が守っているのですね。
歌における背骨の重要性
さて、冒頭で脊柱の機能が呼吸にとっても重要と書きましたが、その理由を紹介しましょう。
私たちが呼吸をするとき、自然な動きとして脊柱全体は伸びたり縮んだりします。ほんのわずかですが、吐く時に伸び、吸うときに寄り集まってきます。鏡を見ながら実際に試してみましょう。動きを感じられない場合、どこかに力が入って自然な動きを妨げているかもしれません。
あなたの脊椎は自然に長くなります、もし硬くさえしなければ。すると今度は脊椎は自然によりもどってきます、無理なくもとの長さを回復します。それはまとまってきます。椎骨どうしが少し離れ、また近寄ってきます。この伸縮運動は反射的なもので一日に何万回も起こります、もしそれに抵抗して収縮しさえしなければ。
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また、呼吸に大きく関係している横隔膜についても重要です。
横隔膜も脊椎に付着していますから、脊柱の状態は呼吸に影響を及ぼします。頸や背中が凝り固まっていると、歌うときに息が続きにくくなるのです。
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横隔膜は脊柱に付着しているため、脊柱の柔軟性が呼吸に影響を与えます。脊柱が凝り固まっていると、どんなに一生懸命を息を吸っても、歌うときに息が続きにくくなるなんて、すぐにでもストレッチをしたくなりませんか。
脊柱ストレッチのすすめ
では、脊柱を緩めるストレッチを二つご紹介します。
お尻上げ運動
これは、お尻の筋肉(大殿筋)を鍛える運動ですが、椎骨をゆっくり動かすため脊柱のストレッチとしても効果的です。
- 仰向けに寝て両膝を立てます。
- 骨盤を動かし、腰を床に押し付けます。
- ゆっくりお尻を持ち上げていきます。その時、椎骨をひとつずつ床から離すようにします。
- 一番上までお尻を持ち上げたら、今度はゆっくり椎骨を床に下ろしていきます。
- 2~4を数回行います。
猫のポーズ
- 四つん這いになり、手は肩幅に開き、肩の真下に手をつきます。足は腰幅に開き、股関節の真下に膝が来るようにします。
- 息を吸って、吐きながら尾骨、仙骨、腰椎、胸椎、頸椎の順に背骨を丸めていきます。
- 背骨が丸まったら、今度は息を吸いながら、尾骨・仙骨・腰椎・胸椎・頸椎の順に背骨を反らせます。
- 2~3を数回行います。
今日は背骨について見てきました。脊柱と呼吸が大きく関係していることを知ると、脊柱の柔軟性を高めたくなりますね。毎日少しずつストレッチを行い、歌うための体を整えていきましょう。
<参考文献>
- 「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」(バーバラ・コナブル著)
- 「歌う人のためのはじめての解剖学~しなやかな発声のために」(川井弘子著)